太宰治
青森といえば太宰治でしょう。「人間失格」や「走れメロス」などすぐれた作品を残した小説家です。
太宰治の生家は、金木町(現、五所川原市)にあります。 明治40年に建てられたと言われる生家は豪邸です。 太宰治は、本名 津島修治。津島家は大地主で当時金融業も行っており大きな財力を有していました。
その生家は、その後旅館として使われていた時に“斜陽館”と呼ばれており、現在もその名残から斜陽館と呼ばれています。 見学をすることもできます。 太い柱や高い天井に加えて見事な欄間や襖絵など当時の贅を尽くしたであろうことがわかります。
太宰治のすばらしいところは、没後70年経った現在でもその作品が読まれ続けていることです。 芥川賞や直木賞は毎年発表され、ミリオンセラーとなることは珍しくありませんが、去年賞をとった作家や作品名を憶えていますか? まして10年前となると憶えている人は稀でしょう。 さらにその作品が読まれ続けているでしょうか。 川端康成のようにノーベル文学賞を獲っているわけでもありません。 あまたいる作家やその作品の中で太宰治は読まれ続けているんです。
太宰治は女性遍歴もありますし、自殺もしています。決して褒められたような人ではありませんでした。 しかし、その作品が現代でも読まれ続けるのには訳があると思います。 文章のすばらしさや普遍性といった薄っぺらい表現では語れない何かがあると思います。
「人間失格」で表現された道化師などは、彼が幼少期に受けたであろう両親からの愛情の希薄さと、使用人たちからただの金持ちとしての嫌味や妬みなどを感じていたからこそ道化師のように振る舞うことで心の平静を保っていただろうこと伺わせます。 実際、太宰は人を笑わせることが好きだったようです。心に抱えた屈折が彼には深く根付いていたのかもしれません。
太宰は「富嶽百景」という作品の中で「富士山は大したことない」と書いています。 その理由はいまとなってはわかりませんが、津軽に生まれてずっと岩木山をみてきた太宰にとって心の風景に岩木山があっただろうと想像できます。
岩木山は弘前からみると漢字の山のように三つの峰がみえますが、太宰の出身地金木からみると尖った一つの峰にみえます。 金木の斜陽館に来たら岩木山の姿もみてほしいと思います。
斜陽館にほど近いところに芦野公園があります。 ここには多くの桜が植えてあって花見のスポットになっています。 また撮り鉄には桜のアーチを進む電車が撮れることでも有名で、桜の時期には鉄っちゃんも多く訪れます。
太宰が奥さんの美和子さんと津軽に帰郷していた時に、ここ芦野公園の桜もみたかもしれませんね。