さくら祭り100周年
弘前公園は日本でも有数の桜の名所の一つです。 園内には52種2600本の桜があります。弘前さくら祭りの期間に延べ250万人が訪れるといいます。 今年そのさくら祭りは100周年を迎えました。桜を愛でる会は、当初“観桜会”(かんおうかい; 津軽弁では、かんごうかい)と呼ばれました。
弘前の桜が咲くのは平年4月23日ころです。今年は4月20日でした。東京から比べると一か月ほど遅くなります。
お城と桜は日本では定番の組み合わせです。 明治維新後に廃城され多くの城が取り壊されました。現存する天守は7つしかありません。その中の一つが弘前城です。 他の城址公園がそうだったように弘前でも明治になってから桜の植樹が盛んに行われました。 1882年(明治15年)に植樹されたソメイヨシノは、現存する日本最古級のソメイヨシノと言われています。
桜は、バラ科にみられる特性として自分の花粉からは実ができない(自家不和合性)を持っています。 このためヨメイヨシノだけではソメイヨシノの種ができません。 いま日本にあるソメイヨシノはすべて一本の樹から挿し木などの方法で増やしたいわばクローンなんです。 ソメイヨシノの寿命が60年と言われ、戦後植えた木が弱り伐採されている中で弘前のソメイヨシノが130年を越えて生きて変わらずに花を咲かせていることはすばらしいことだと思います。
弘前公園の桜がすばらしいのは、その桜の世話をしている桜守(さくらもり)の努力の賜物です。 “桜切るばか、梅切らぬばか”の言伝えにある通り、桜は切り口から傷み腐食したり枯れてしまうことがあります。 しかし弘前公園の桜は毎年剪定を行っています。弘前方式と呼ばれる独自の剪定技術を持っています。 その剪定は弘前で盛んに作られてきたリンゴの木の剪定技術を応用したものです。 桜もリンゴも同じバラ科で同じ剪定技術が使えると考えたからです。
現在弘前では桜守をチームで行っています。樹木医の資格を持つ橋場真紀子さんはその一人です。 ソメイヨシノについても寿命は無いのではとも話します。
絵になる桜
弘前公園はどこを撮っても絵になります。それだけ桜が見ごたえがあります。
桜と一緒に遠くに臨む岩木山を撮れる外濠北側はお勧めです。岩木山と一緒に桜が撮れるのはここと、西濠、本丸があります。 また建物の上から弘前公園と岩木山を臨める市役所屋上は隠れたスポットです。 市役所屋上はさくら祭り期間だけ一般の方も入れます。
また夜は桜のライトアップも行われます。風のない夜、ライトアップされた桜が水面に写る光景も美しいです。
ワンストップ
桜と言えばお花見です。弘前公園でもレジャーシートを敷いて花見を楽しむスポットが数か所あります。 まずは追手門近くにある市民広場、東門に近いピクニック広場そして天守のある本丸です。
青森の花見で定番と言えばガサエビとカニです。ガサエビはシャコのことです。カニはトゲクリガニで、小ぶりで小さなトゲがあります。 どちらも春が旬で、トゲクリガニはサクラガニとも呼ばれます。 地元のスーパーに行けば必ず売られています。
弘前公園の楽しみはお花見だけではありません。
西濠を一周するように通路があって両脇には桜が植えてあります。ちょうど桜のトンネルになっています。家族や友人などと一緒に歩くだけで楽しくなります。 また西濠には朱塗りの橋がかかっていて撮影スポットになっています。
その西濠では手漕ぎボートがあって、水の上から桜を楽しむことができます。
中濠では船頭が竹竿で進める遊覧船もあります。遊覧船は海外の方にも人気です。他には人力車もあります。もちろん観光案内をしてくれる市民ボランティアもいます。
天守の北側 北の郭にある武徳殿では通年でお殿様やお姫様になれる衣装の着付け体験もできます。 勇壮な甲冑姿や、美しい色打掛け姿で江戸時代にタイムスリップすることもできます。
もう一つ珍しいのは、お化け屋敷でしょうか。一般に夏の催しですが、弘前公園ではさくら祭りの定番です。
また外せないのは屋台の多さでしょうか。定番の焼きそばやたこ焼きはもちろん、温かいおでんにそば、ラーメンもありますし書けばきりがないほど種類も豊富です。
中でも珍しいのは、黒コンニャクとイチゴ飴でしょうか。 おでんのコンニャクがなぜか真っ黒なんです。園内を歩いているとその黒コンニャクを食べながら歩いている人をみかけます。 海外の方も珍しいのか食べている方もいます。 お祭り定番のリンゴ飴だけはありません。その代わりにイチゴ飴があります。 弘前は日本一のリンゴの産地なので地元ではリンゴは珍しくないからでしょうかリンゴ飴はありません。
園内には桜の木がハートになっているところもあります。場所は秘密です。探してみてください。恋人同士で見つけることができれば愛が深まるかもしれません。
桜は一週間ほどで散っていきます。桜吹雪もまた美しいです。更に息を飲むのは、散った花びらで濠が埋め尽くされる“花筏”です。 まるで桜の絨毯のようになることもあります。咲いて愛で、散ってなお美しい。
このように弘前公園には花をみるだけではなく様々な楽しみ方ができる工夫がなされています。 いわば桜のワンストップソリューションでしょうか。
特別な春
青森の冬はおよそ半年続きます。一面が雪で真っ白の凍てつく冬が終わって、ようやく迎える春。 その春を実感できるのが桜です。桜が咲けば、あ~春だね~と感じます。桜、青森の桜が好きです。